エリザベス1世のファッションは、宮廷内にトレンドをもたらすだけでなく、非常に象徴的なものでした。
女王の神格化によって国をまとめる必要があった当時のイングランドでは、生涯にわたってエリザベス1世の肖像画が制作されました。
作品の多くで印象的なのが、華やかな真珠のジュエリーです。「美」「完全」「処女性」のシンボルである真珠を好んだエリザベス1世のジュエリーや装飾品を紹介します。
王女時代に身につけた真珠のジュエリー
王女時代のエリザベスは、王族としては華美というより落ち着いた印象のドレスを着ています。
真珠のネックレスは存在感があり、衣装やヘッドドレスにも真珠が縫い込まれています。
ファッションへのこだわりで知られるウィリアム・スクロッツによって、ヘンリー8世のために描かれたものです。
女王の衣装とジュエリー
女王に即位してからは、絶対的な君主、カリスマであり続けるために、豪華な装いを徹底するようになります。
ふんだんに使われたパール。胸にはペリカンのペンダントがかけられています。
ペリカンのペンダントは「親鳥が自らの胸を突き、その血を雛鳥に与える」という意味合いで、キリストの犠牲と蘇生をシンボル化しています。
刺繍が美しい黒のドレスにふんだんにパールがあしらわれています。
胸元のフェニックス(不死鳥)のペンダントは、再生と貞操の象徴であり、女王自身の権力の台頭を表すものです。
また、シェイクスピアの「不死鳥と雉鳩」より、エリザベス1世とエセックス伯の関係を表しているという説もあります。
晩年の女王・真珠のジュエリーとシンボライズ
晩年のエリザベス1世、老いを知らない女王を寓意的に描いた作品です。
「NON SINE SOLE IRIS(太陽無くして虹もなし)」と記されており、女王が太陽であることを意味しています。
王冠を象徴したヘッドドレス、華やかなイヤリング、バラやカーネーションなどの花々が刺繍された春爛漫の衣装を身にまとい、手には虹をつかんでいます。
首に飾られているのは、情熱を表すルビーと処女の象徴である真珠。
レースのラフ(襞襟)にある装飾品のモチーフはよく見ると騎士の手袋で、男性と等しい女性統治を象徴しています。
さまざまなジュエリーやシンボライズが目を引く作品ですが、ふんだんに使われた真珠が存在感を放つ一枚です。